植え込み資材を理解する!胡蝶蘭を土に植えてはいけない理由

98,830view

胡蝶蘭は本来、熱帯雨林などの樹木の幹や樹皮に根を張って育つ着生植物です。そのため、根は土の中になく絶えず空気に触れており、雨が降っても風で根の付近は乾くといった環境で生活しています。
樹木に根を張って育つといっても、樹木から養分を吸収しているわけではありません。空気中の雨や霧などの水分を吸収して育っています。

土の中の養分に頼らず、自然の雨や霧だけに頼って水分を補給する仕組みであるため、胡蝶蘭は乾燥に強い植物になりました。そのため、普通の土に胡蝶蘭を植えてしまうと、次第に根の呼吸を妨げ根腐れを起こしてしまいます。胡蝶蘭の根や葉はできるだけ空気に触れていたいのです。
では日本の気候において、胡蝶蘭が過ごしやすい環境を生み出す植え込み資材はどのようなものがあるのでしょうか。

そこで今回は、胡蝶蘭の植え込み資材にはどのようなものが使えるのかをご紹介します。胡蝶蘭を育てる際には、ぜひ参考にしてみてください。


胡蝶蘭にとって理想の環境


胡蝶蘭を健康に育てる理想の環境は、やはり生息地に似た環境をつくってあげることです。
特に、温度、湿度、光、通風の4つをつくりだすことです。
その中でも植え込み資材は、湿度、通風の2つに大きく関係しており、胡蝶蘭を育てる上で大切な要素となります。

そのため胡蝶蘭の根は、以下のような環境を作り出してくれる植え込み資材が理想といえます。

  • 鉢の中に大量の水を流したら、鉢の上に水だまりができず、一気に鉢底から流れ落ちるようなもの
  • 鉢の中は水浸しの状態が続かず、しっとり感を長く保てるもの
  • 湿度が高い場合は、鉢内が比較的早く乾く乾くもの

このことからも胡蝶蘭を土に植えてしまうのは絶対に避けなければいけません。
植え込み資材と根との間にある程度隙間の開くもの、水分量が少し保てるものが理想の植え込み資材といえます。


利用される胡蝶蘭の植え込み資材


|水苔(みずごけ)

日本では胡蝶蘭の植え込み資材に水苔を使用するのが基本とされています。本来であれば、胡蝶蘭にとって水苔では通気性が低いです。
しかし梅雨の時期を除けば、胡蝶蘭の生息地である熱帯雨林と比べて日本は湿度が低くなります。そのため、水苔は他の植え込み資材に比べて保水力が高く、水やりの頻度を減らすことができるなどの利便性に優れています。
また日本において、植え込み資材ごとの胡蝶蘭の生育に関する実験では、植え込み資材に水苔を使用して育てた胡蝶蘭が一番株も大きく、輪数(咲く花の数)も多くなったという結果が得られているようです。

※当サイトでは、水苔を利用した胡蝶蘭の植え替え方法も紹介しています。植え替えにチャレンジしようと思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。



|バーク

バークとは樹皮(松など)を細かく砕いたものです。本来は植物が植わっている土の表面を覆う目的で使用されますが、胡蝶蘭の鉢に使用する場合は植え込み資材として使います。
胡蝶蘭は元々樹木に根を張って生育する植物なので、バークは植え込み資材として適しています。海外の植え替え動画などを見ると、バークを使われていることがほとんどです。

しかしバークは水苔に植え込みされた胡蝶蘭よりもナメクジなどの害虫が発生しやすく、鉢の中の乾き具合が分かりにくいデメリットがあります。

また、胡蝶蘭を枯らしてしまう一番多い原因は水の与え過ぎによる根腐れです。根の環境が乾燥する前に水やりを行い、常に根が湿っている状態にしてしまうのです。
バークであれば、胡蝶蘭のことを知らずに毎日水やりを行ってしまっても、水苔ほど保水力はないため根腐れを起こしにくい植え込み資材といえます。



|ヤシガラ

ヤシガラは主にヤシの外皮を細かく砕いたものです。バークよりも保水力が高いです。ヤシガラは耐久性、カビを発生させない等の利点から海外のラン園などで利用されています。
もしヤシガラを利用する場合には、ヤシガラは完全に乾くと普通に水を与えても隙間を素通りして保湿しないことがあるので注意が必要です。



このような植え込み資材の他にも、通気性や保水性など胡蝶蘭にとっての理想の環境を作り出せるのであれば、毛糸や布などのを利用すればさらに良いのではないかと思われた方もいるかもしれません。
しかし、保水性以外に重要なのがカビないことです。毛糸や布などは水を与えている内にカビが生えてしまいます。水苔やヤシガラ自身は通常の栽培ではカビは生えません。胡蝶蘭を育てる上で、防カビ性は保水性以上に大切な要素だったりします。

いかがでしたでしょうか。
植え込み資材ひとつとっても特徴があり、胡蝶蘭を育てる上で大切なことが分かっていただけたと思います。そして今回紹介した植え込み資材から、胡蝶蘭がどういう植物なのかが少し分かった、という方もいるのではないでしょうか。植え込み資材はその植物が生育するための理想の環境に近づけるため、植物によって違ってきます。それぞれ特性があり、メリット・デメリットありますので、胡蝶蘭にとって適切なものを選びましょう。

育てる環境に合わせた植え込み資材をどれにしようかと選ぶところから、胡蝶蘭を育てる楽しみがあります。特性を把握し大きな花を咲かす胡蝶蘭を育ててみてください。

「参考になった!」「これからも期待しているよ!」そんな気持ちでしたらクリックお願いします

TOP