【光合成の秘密】胡蝶蘭は夜間に二酸化炭素を出すって本当?

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あまり知られていないことなのですが、胡蝶蘭は他の植物とは少し違う光合成をしています。そのため、日光をさほど必要としない、ほとんど水やりも必要ない特徴があるのです。これは、サボテンと同じ光合成の仕組みをしており、水やりが少なくて良いのですが、「サボテンと一緒?」そう聞くとちょっと興味がわいてきませんか?

そこで今回は、胡蝶蘭の植物上の特徴でもある、光合成の秘密を紹介したいと思います。最後に「胡蝶蘭は夜間に二酸化炭素を出すから酸欠になる」という噂の真相も解明しようと思います。


一般的な光合成


多くの植物は昼間に光を浴びて光合成を行います。
少し学校のお勉強みたいになってしまいますが、「一般的な光合成とは何か?」を解説しておきたいと思います。

光合成は昼間の太陽が出ている時に当たる光エネルギーを使って、水を分解させると同時に、空気中の二酸化炭素を吸ってデンプンなどの有機物に固定させ、酸素を生成するというものです。そして空気中に生成した酸素を放出しています。
このように、昼間にエネルギーを作るためには、植物は日光が必要になり、水分もたくさん必要になるのです。

一般的な植物は、水をたっぷり与えて、太陽の光をたくさん浴びれば元気にすくすく育つのは、この光合成を行えるためなのです。


胡蝶蘭の光合成「CAM型光合成」


先ほど説明したように、多くの植物は昼間に日光を浴びて光合成を行います。しかし、胡蝶蘭は一般的な昼間の光合成を行いません。それはいったいなぜでしょう。

そもそも胡蝶蘭は着生蘭です。胡蝶蘭の自生地では、樹木の上や木の幹などに張り付いて生活しています。そのため、水がいつでも吸収できる状態ではありません。そこで、水を少しでも減らさないような仕組みの光合成を行う必要があったのです。

少し専門的になりますが、胡蝶蘭は夜間に気孔を開いて二酸化炭素を吸収し、昼間は光合成のための気孔を閉じています。夜間に取り込んだ二酸化炭素を昼までため込んで、デンプンなどの有機物に固定させているのです。
もし暖かい昼間に気孔を開けてしまうと、そこから水分が蒸発しやすく水を失ってしまいます。

つまり、一般の植物はこの一連の光合成反応を昼間に行っているのに対し、胡蝶蘭は水分を失うのを極力避けるために、昼と夜に分けて光合成反応をしているのです。砂漠などに自生している、サボテンなども同様の光合成を行い、これをCAM型光合成といいます。

水分不足に陥りやすい環境に対処する手段として、胡蝶蘭とサボテンが同じCAM型光合成を行っているというのは、とても興味深いことです。


夜部屋に置いておくと、二酸化炭素で酸欠に?


このような特性から、胡蝶蘭を部屋に飾ることはあまり良くないという噂が流れました。「夜間部屋に置いておくと酸欠になってしまう」というものです。こちらに関しても、少し解説します。

一般的な植物は、太陽の光を浴びている時に気孔を開けて光合成をしますが、胡蝶蘭などのCAM型植物は、夜間に気孔を開けるという説明をしました。
胡蝶蘭も気孔を開いた際に、酸素と二酸化炭素を吸い込みます。その際、不要な分の二酸化炭素はすぐに排出されますが、光合成を行っていない夜間に、酸素は排出されません。結果的に、夜間に気孔を開けるというのは、酸素を吸って二酸化炭素を排出している形になります。

このことから、夜間胡蝶蘭の置いてある部屋で過ごしていると、二酸化炭素が充満しで酸欠になってしまうという噂が流れたのでしょう。
実際には、胡蝶蘭の吐き出す二酸化炭素の量よりも、人間の呼吸で吐き出される量の方が断然多いため、胡蝶蘭を置くことによって酸欠になってしまうなんてことはありません。あくまでも噂ということですね。(サボテンを置いておいたら酸欠になったという話も聞きません)

いかがでしたでしょうか。
今回は、胡蝶蘭の特徴でもある光合成の秘密を紹介しました。水分が不足する場所で生息する植物が適応するために生まれたのが、CAM型光合成です。胡蝶蘭はこのCAM型光合成を行う植物だったのです。胡蝶蘭の水やりが少なくていいこと、他の花に比べて花持ちがいいことは、この光合成の方式にも起因しています。

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